セミに寄生する冬虫夏草「セミタケ」

「セミタケ」はセミの幼虫に寄生する冬虫夏草の一つです。
冬虫夏草は、セミの他、芋虫、トンボ、蚕のさなぎなど、色々な昆虫に寄生します。現在世界で発見されている冬虫夏草は約350~400種類。
この中でも、セミタケはセミにしか寄生しない珍しい冬虫夏草で、近年では免疫抑制という視点で注目されています。
元々中国では、セミの幼虫や成虫も食べる習慣がありましたが、非常に産生数が少なく希少価値の高いものでした。
さらに中国には、セミに対して「再生」や「高潔」なイメージがありました。
これは、セミが土から這い出して羽化する姿が再生(蘇り)のように見え、さらに木の樹液のみで成長する姿が、
理想的な君子のイメージと重なったからだと言われます。
また、セミタケは成長していくとまるで花のようにセミからタケが伸びるので、中国でセミタケは「金蝉花(きんぜんか)」と呼ばれています。
昆虫に寄生する動物性キノコという広い概念での冬虫夏草は、日本でも多く発見されています。
中でもセミ科の幼虫に寄生するセミタケは日本各地で発見され、トビシマセミタケ、オオセミタケ、エニワセミタケなど、セミの生息している
日本列島の各地に出現し、新しいセミタケの発見が今後も期待されています。
また、近年の研究では、セミにとって必要な共生真菌の進化に冬虫夏草の進化が深く関わっているということが明らかになりました。
セミで見られる「共生」と「寄生」の関係や、昆虫が感染症である虫草菌から自身を守ろうとする防御機能などの研究は、
少しずつ冬虫夏草の薬としての解明とともに進歩し続けています。
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