冬虫夏草の一種「ヤンマタケ」

ヤンマタケとは、ヤンマ科のトンボに寄生する冬虫夏草の一種です。
中国では、チベットやヒマラヤ山系、四川省など極めて高い高山地帯に生息するコウモリ蛾の幼虫に寄生した「コルジセプス・シネンシス」のみを冬虫夏草と定義しています。
一方日本では、昆虫に寄生してキノコを形成する虫草菌類を総称して冬虫夏草と呼び、
ヤンマタケのような冬虫夏草が日本にも自生していたのが分かったのはごく最近のことでした。
空中に飛ぶトンボ、そこに分生胞子として感染し、生きているトンボに寄生します。
虫草菌であるヤンマタケ菌は、トンボの昆虫蛋白を栄養源として成長し、やがてトンボを死に至らしめ、
子実体であるキノコ部分を伸ばして子孫を残していきます。
ヤンマタケに感染したヤンマは、生きたまま乗っ取られたようになるわけです。
トンボが羽根を広げて枝に止まったまま息絶えた姿は、とても印象に残る写真資料のひとつです。
そして、ついには昆虫が死んだ後、全体に細菌を張り巡らせ、昆虫の堅い皮を突き破って子実体と呼ばれるキノコの部分を伸ばします。
その状態では、既に昆虫は完全に菌に占拠され、内臓なども全て菌糸体に置き換わっているのです。
どのようにして菌が昆虫体内で繁殖するのか、そのメカニズムは一部解明されたばかり。
免疫抑制のメカニズムとも関連し、医学的見地から非常に注目されているところです。今後も謎の多い秘薬「冬虫夏草」の解明がすすみ、
新たな薬理作用の発見や新薬への応用などが大いに期待されます。
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