秘境の高地、チベット産の冬虫夏草

冬虫夏草と呼ばれるものは世界で約350種類。この中で中国が認める由緒正しい漢方生薬は、コウモリ蛾の幼虫に寄生する「チベット冬虫夏草(コルジセプス・シネンシス)」の1種類のみなのです。コウモリ蛾が生息するのは、雲南省やチベット、四川省などの4,000~5,000mの高山です。そんな高山の奥地は、自然環境の厳しさゆえに現地の人以外は立ち入る事すらできません。さらに、採取できるのは1年のうち5月から7月の雪解けが始まったほんの三か月程度。わずか3センチほど出ている冬虫夏草を見つけるのですが、成長はそれぞれに個体差があり、最適な成分時期はほんの数日しかないと言われています。未熟でも成長し過ぎていてもその成分が希薄になるため、安定した品質の天然物はまさしく幻のキノコなのです。
このように、極めて貴重な天然のチベット冬虫夏草の価格は、現地でも驚くほど高騰しています。また、チベット冬虫夏草そのものも菌株も中国国外への持ち出しは禁止されていますので、通常の商業目的では日本で出回ることはないと言えます。現在、日本で輸入されるものは、四川省や雲南省のものが多いのですが、残念ながら未成熟で有効成分の希薄なものが多いのが現状です。そのような天然物に頼るばかりでなく、人工的に培養しようとする動きがあります。まだまだ日本では、中国に比べて研究の歴史は浅いのですが、生物の不思議とも思われる貴重な冬虫夏草のしくみを解明しながら、自然との共存・協和を図るべく、研究は続けられています。
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